認知症の記憶障害

認知症の記憶障害の法則

認知症の人に例外なく起こるひどいもの忘れ

認知症,記憶障害,中核症状

 

記憶障害は認知症のもっとも基本的な症状(中核症状)で、認知症になった人には例外なく起こります。

 

 

そして、この障害が生じることによって、二次的に様々な症状(行動・心理症状)がもたらされます。

 

 

記憶障害には「新しいことが覚えられない」「経験そのものを忘れる」「過去の記憶の中で生きる」という3つの特徴があります。

 

 

新しいことが覚えられない

 

人間の記憶能力は、新しいことを覚える「記銘力」、覚えたことを保存する「把持」、覚えたことを再生する「想起」に分けられます。

 

 

認知症では特に記銘力が衰えるため、ひどいもの忘れが起こってきます。例えば認知症の人は同じことを何十回と繰り返しますが、これは新しいことを覚えられない記憶障害のためです。

 

 

介護する家族は、認知症の人は話したことも見たことも行ったことも、その直後にはきれいさっぱり忘れてしまうほどの、ひどいもの忘れ状態に置かれていることを、まずはよく理解する必要があります。

 

 

また、記憶になければ、「認知症の人にとっては事実ではない」ということも家族には知っておきたいものです。

 

 

例えば認知症の人が失禁した下着をゴミ箱に捨てたとします。その行動自体を忘れてしまっているので、自分が捨てたことは事実ではないのです。

 

 

このようなことが認知症の世界では日常的であることを、介護する上で心得ておくのも、家族の心が疲弊しないためには大切です。

 

 

対応のポイント「何度言ったら分かるの!」は禁句

 

認知症の人はその都度忘れてしまうので、何度同じことを答えてもかまいません。優しく繰り返すことで、そのうち収まります。

 

 

やってはいけないのは「何度言ったら分かるの!」と叱ること。認知症の人には記憶にないことなので「叱られた」という感情だけが残り、介護者への悪感情を抱きます。

 

 

認知症の症状悪化につながることもあるので注意しましょう。

 

 

経験そのものを忘れる

 

記憶障害の2つめの特徴は「経験そのものを忘れる」ことです。つまり、出来事の全体を丸ごと忘れてしまうのです。

 

 

そのためたった今、食べ終えたばかりなのに、食事をしたこと自体を忘れてしまい、「まだ食べてない!」と言い張り、家族を困らせることがあります。

 

 

こうしたことは他の場面でもしばしば見られます。例えば、デイサービスに初めて出かけた認知症の人が心配になり、家族がデイサービスの様子をのぞいてみると、とても楽しそうに歌ったり、ゲームをしたりしているので、家族は安心したとします。

 

 

ところが、帰ってきた認知症の人に「初めてのデイサービスはどうだった?」と感想を聞いても、認知症がある程度進行している人は「今日はどこにも行っていない。家にずっといた」と、まじめな顔で答えることが多く、介護する家族を驚かせることがあります。

 

 

家族は、認知症の人が何も覚えていないことが悲しくなったり腹立たしくなったりして「今朝、迎えの車が来て出かけたでしょ」「楽しそうに歌を歌っていたじゃない?」とあれこれ話題を振って思い出してもらおうとしますが、デイサービスに出かけて行ったこと自体を丸ごと忘れているので、このような対応をしても徒労に終わります。

 

 

しつこく言うと「私はデイサービスに行った覚えはないのに・・・」と、認知症の人の不安が増すだけで逆効果です。

 

 

こんな場合は、丸ごと忘れてしまったという事実を受け入れて、無理に思い出させようとしないことです。

 

 

「何も覚えていなくても半日楽しく過ごしていたのだから、それでいいか」と割り切りましょう。

 

 

その方が認知症の人も家族も混乱せず、お互いに心穏やかに過ごすことができます。

 

 

対応のポイント「丸ごと忘れても、がっかりしない

 

新しいことを覚えてもらおうといった期待をかけず、またある出来事をきれいさっぱり忘れていてもがっかりしないことです。

 

全体の記憶を忘れてしまう障害のためだ」と理解して受け止めましょう。

 

 

介護する家族が忘れていることにこだわりすぎると、認知症の人を不安にさせたり追い詰めたりするおそれがあります。

 

 

記憶の中で生きる

 

記憶障害の3つめの特徴は「過去の記憶の中で生きる」ということです。

 

 

認知症の人には、蓄積されてきた記憶が現在から過去にさかのぼって失われていく「記憶の逆行性喪失」とよばれる現象が見られます。

 

 

つまり、現在を起点として数年分、数十年分の記憶をごっそり忘れてしまっていることが起こります。

 

 

そして、最後に記憶が残っている時点が「その人にとっての現在」ということになります。

 

 

そのため、80歳の認知症の人に「いくつですか?」と尋ねると「40歳」と答えるなど、実年齢とかけ離れた年齢を答えるので、まわりの人が面食らうことがあります。

 

 

しかし、40歳と答えた認知症の人は、41歳から現在までの記憶がすっかり消えてしまっているので、脳の中にまだ残されている40歳の頃の記憶の中で生活しているのです。

 

 

さらに認知症の人は症状が進むにつれて、残っている記憶も失っていくので、若い頃に体験した世界にどんどんさかのぼっていきます。

 

 

このように認知症の人は「過去の記憶の中で生きる」という特徴があることを知っておくと、次のような不可解な行動をとることにも納得がいくでしょう。

 

 

認知症,記憶障害,中核症状とっくに退職しているのに、朝になると「仕事に行く」といって、背広を着て出かけようとする。

 

認知症,記憶障害,中核症状夕方になると、荷物をまとめて昔住んでいた自分の家に帰ろうとする

 

認知症,記憶障害,中核症状自分の子どもがまだ小さいと思っているので、目の前にいる娘のことを妻や、妻の姉妹だと認識する。

 

認知症,記憶障害,中核症状結婚前の旧姓を呼ばれなければ返事をしない。

 

 

認知症の人が、いま生きている時代や世界をよく理解することによって、介護する家族もおのずと対処の仕方がわかってきます。

 

 

対応のポイント「認知症の人が住む世界を楽しむ

 

過去の記憶の中で生きているので、現在の世界を認めようとしません。

 

 

いくら真実を説明しても通じないばかりか、自分をだまそうとする悪人だと警戒されることもあります。

 

 

ですから、介護する家族は不可解な行動だと思っても、認知症の人が住む心の世界に行き、一緒に楽しむくらいの余裕を持った方が介護もうまくいきます。

 

 

 

 

 

 


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